公証人

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ちょっと興味深い記事をみつけました。
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「公証人が調査義務怠る」と認定  東京高裁、賠償責任命じる
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009062401001052.html
 経営する会社が債務者となっている男性が、債権者名を無断で訂正した書類を基に公正証書が作られたとして、国や債権者らに約359万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、「訂正内容について、公証人が積極的な調査義務を怠った」として計約306万円の支払いを命じた。


 公証人は法相が任命する公務員。男性の弁護士によると、公証人に積極的な調査義務を認めた判断は異例。昨年9月の一審東京地裁判決は国の責任を否定していた。


 大坪丘裁判長は、債権者名が当初の金融業者から二重線で別の業者に訂正されていたことから、「男性に無断で訂正された可能性を強く推認させる」と指摘。


 その上で「公証人は債権者変更について男性に照会して確認するか、客観的資料の提出を求めるなど積極的な調査義務を怠り、違法な職務執行に当たる」とした。


 判決によると、男性は2003年1月、自分の会社が金融業者から1400万円の融資を受けるため、契約書の連帯保証人の欄に署名、押印。


 融資は最終的に実行されなかったが、金融業者の仲介者らが契約書の債権者の欄を無断で訂正して東京都内の公証役場に持ち込み、公正証書が作成された。
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公正証書という書面のことを皆さんご存知でしょうか?
簡単に言うと、公証人という人の前でXさんとYさんが合意した、あるいはZさんが独白した内容を、公証人が書面化したもの。それが公正証書です。
前者の典型例は金銭消費貸借とか離婚に伴う給付の合意書とか。
後者の典型例は遺言書でしょうね。
原則としては当事者本人の立ち会いを要するのですが、委任状さえあれば本人の立ち会いがなくても作れてしまうので、結構悪用されることが多いのです。
きちんと使えば結構便利な書面なんですがねぇ。
残念ながら、SFCG(破産手続中)などの高金利業者や、ヤミ金業者などに悪用されているケースがかなり多いです。
で、上記のニュースは、公正証書が悪用されたケースで、それだけなら必ずしも珍しくないのですが、公証人の調査義務違反が認容され、公証人の任命権者である国の賠償責任が認められたことが珍しいのです。
公証人には、基本的にあまり積極的な調査義務がないんですよね。
それを課すと公正証書一枚作るのに大変になってしまうからかなと勝手に推測してますが。
しかし、実務をやってると、公証人ももう少し頑張れよと思うことが多々あります。
公証人が防波堤になってくれないと、世の中で悪用される公正証書は後を絶たないのですよ。
極端な話、白紙委任状一枚(+印鑑証明書)をヤミ金に渡してしまえば、それがもとで妙な公正証書を作られ、先祖伝来の家土地を取られてしまうなんてことだってあり得るのです。
上記のニュースの事例は、もともとはXさんが自分の経営するY社のA社に対する借入の連帯保証人になる趣旨で白紙委任状をA社に渡したところ、結局A社のY社に対する貸付が実行されなかったにもかかわらず、A社が勝手にその白紙委任状をB社に譲渡し、B社が白紙委任状を訂正してXさんの公正証書を作って家土地を差し押さえて競売に掛けてしまったという、非常に恐ろしい事例です。
Xさんの代理人弁護士さんがうまく手を打って競売を阻止し、国賠まで勝ち取ったからよかったです。
あと少しでXさんはホームレスになってしまうところでした。
で、この白紙委任状の訂正について、公証人にはXさんへの照会などをかけて調査すべき義務があったと、その義務を怠って公正証書を作成した結果Xさんに大迷惑をかけたのだから、その公証人を任命した国は損害賠償責任を負うのだと、そういうことを大坪裁判官はのたまったわけです。
うん、そのとおり。納得のご判断。
公証人にも、司法書士が登記をするときみたいに、きちんと本人の意思確認義務を課した方が良いと思います。
こういう調子で、公正証書の悪用が減ってくれると良いんだけどなぁ。
ちなみにこの判決を書いた大坪裁判官。
ついこの間まで横浜地裁の執行部にいらしたのですが、実はワタシが東京地裁で民事裁判修習をしていた時代の配属部(民事31部)の部長だったのですよ。
修習時代に一度小さい交通事故の件で、めちゃめちゃ意見を戦わせた記憶があります。
確か論点は、「違法な路駐をしているA車の運転手は、その路駐をよけて交差点に出たB車が事故を起こしてしまった場合、B車の運転手に対して損害賠償責任を負うか」でした。
結局判決がどうなったまでは見ていませんが、たぶん「額は小さいかも知れないが、やはり損害賠償責任がないとは言えないだろう」という、大坪部長の意見どおりになったんでしょうね。w
あと大坪部長といえば、昼はいっつも法務省でおそばを食べてた記憶ですね。
法務省の地下には、他にもお寿司とかうなぎとかいろいろ食べられる店があるんですけど、大坪部長はホントにいっつもそばのみでした。
それに3か月付き合わされたおかげか、あのころはワタシも今よりもっともっとスリムだったんだよな(遠い目)。
ではまた。