お誕生日でした

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気がつけば約1か月ぶりの投稿です。
ホントに日が経つのは早いもので。
ずっと仕事に明け暮れていました。
この時期は、裁判所も異動時期で、あまり法廷が入らないんですよね。
だから、普通は弁護士も少しは暇になるはずなんですが、どうもそうはいかないようで。
今日はさすがに法廷なかったですけど、書くものがたくさんあって。
なんて言ってる場合ではないのです。
今日はうちの事務局長さまのお誕生日。
いつもならお誕生日会をしているところですが、いろいろな行事が重なり、来週に合併企画を打つのがようやく。
やっぱり忙しいのだなぁ。
全然さぼってないのに、ずううっと仕事ばっかりしてるのに、仕事一つ一つを見ればかなりのスピードでこなしまくってるはずなのに、机の上からファイルの山が消えないって、一体どういうことでしょうかね。
愚痴ってても全然面白くならないので、久々に気になった記事のことをお話しますね。
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学習塾に1億円賠償命令=講師が女児殺害、使用者責任認める-京都地裁
3月31日17時27分配信 時事通信
 京都府宇治市の学習塾で2005年、小学6年堀本紗也乃さん=当時(12)=が塾講師の男(27)=殺人などの罪で服役中=に刺殺された事件で、紗也乃さんの両親が塾を経営する「京進」(京都市)の使用者責任などを問い、約1億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁(松本清隆裁判長)は31日、同社に約1億円の支払いを命じた。
 松本裁判長は塾側の使用者責任を認め、「講師の使用者である塾が、講師が負うべき損害賠償額と同額の責任を負うことはやむを得ない」と指摘。京進側の「女児殺害計画に気付くことは困難で、故意に罪を犯した講師とは責任が異なる」などとの主張を退けた。 
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何とも悲しく痛ましい事件です。
ご両親は、1億円くらいでは到底気が治まらないだろうと思います。
万が一私の娘が同じ目にあったら、私は犯人を絶対に生かしておかない気がします。
なぜにこの記事が気になったかというと、コメント欄に「塾がかわいそう」「判決がおかしい」的な意見が多かったからです。
法的な面だけで申し上げると、これは、民法715条1項に定める「使用者責任」が問題となった訴訟です。
この条文をそのまま引用すると、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」というものです。
判決書自体を見ていないので分かりませんが、この但し書き以下が問題となったのでしょうね。
つまり、「塾が、この講師の選任及び事業監督について相当の注意をした」といえるか、また「相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき」といえるか、ということです。
細かい事情が分からないので印象レベルですが、塾は講師と同じ責任を負担せざるを得ないと思います。
なぜなら、使用者責任というのは、被害者保護のためにいわば使用者のために無過失責任を定めたに近い、そういう趣旨の不法行為責任だからです。
「利益が帰すところに責任も帰す」という、いわゆる報償責任という考え方も背景にあります。
そういう意味で、この715条1項但書が適用される場面とは、極めて限定的なのです。
私も学習塾の顧問弁護士を勤めておりますが、もし私がこの塾側の代理人をすることになったとしたら、とにかくできるだけ早期に和解をまとめることを目指すでしょうね。
判決になってしまうと、いろいろな意味で塾側にリスクやダメージが大きすぎますから。
それができなかったということは、よほど原告のご両親の被害感情が厳しいものだったのか(十分ありえる話です)、あるいは塾側の読みが甘かったのか誠意がなかったかお金がなかったか、といったあたりですね。
しかしこういった事件を見ると、法律上やむをえないのですが、つくづく使用者は大変だなぁと思います。
うちの事務所もまだ新人弁護士を募集中ですが、本気で厳選すると全然人材がいない、というのがいつわらざる現実です。
変なの抱えてしまうとかえって大変ですし、依頼者の皆様にも申し訳ないですからね。
事務局陣の人材にめぐまれているのが何よりの救いです。
ではまた。