最近の離婚事案について思う件2

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先ほどは女性側代理人の目線から投稿しましたが、(主として)男性側代理人としての目線からも思うことがあります。

 

当方依頼者側に全然お金がないことも明らかだし、婚姻破綻に至る経過において当方依頼者側に大きな非がないことも明らかな事案なのに、ひたすら高額の支払を請求してくる相手当事者(主に女性ですが、最近女々しい男性も多い)がだいぶ増えたな、と思うのです。

「きっと私の知らない財産があるはずだ」という思い込みによる高額な財産分与請求とか、根拠のよく分からない高額の慰謝料請求とか。

 

それでも調停で解決するならまだいいんです。

問題は、離婚するという結論も親権者をどちらにするかについての結論も合意できているのに、ただ、このよく分からない高額の請求のみに相手配偶者がこだわって調停が不調となり、離婚訴訟化する、という事例が大変増えたように思うことです。

訴訟にしたところで、ゼロはゼロなのに。

そういう事例は往々にして、離婚訴訟になっても和解では解決できずに判決決着となり、こちらの主張通りの判決に対して相手配偶者側が控訴したりします。

そうなると、最終的には受任から解決まで少なくとも2~3年を要することになります。

 

結局判決での結果よりも、調停段階でこちらが提案していた調停案の方が、相手配偶者側にとってよかったりします。

当然、もう判決が出てしまってますから、こちらは調停案を復活させたりはしません。

そういうとき、相手配偶者(対立当事者)側の代理人は、時間ばかりかけて何の利益ももたらさなかった結果について、一体本人にどう説明しているのだろう?と思います。

 

よく分からない高額の慰謝料請求が増えたことの背景には、たぶん「モラハラ」「DV」という言葉が世間で市民権を得たということがあるのでしょう。

しかし、この言葉は、ややもすると「結婚がうまくいかなかったことについて、全てを相手配偶者のせいにしたい配偶者(※女性ばかりとは限りません)」の逃げ場になりがちだ、とも思います。

自分は一方的に被害者だ、という思いが一方配偶者に強いと、こういう現象が起きがちだと思います。

普通は双方それぞれに落ち度があり、一方だけに落ち度があるということはほとんどないのではないかと思いますが。

 

相手配偶者に対して高額の請求をしたい配偶者の気持ちも理解しますが、ふっかければいいというものでもないのですよね。

当事者間の協議で解決するなら弁護士はいらないわけですし、裁判所がひたすら一方配偶者だけの味方をしてくれるわけでもありませんし。

最初に高額の請求をふっかけすぎて、かえって、一度振り上げてしまったコブシの落とし所を見失っている方も多いように思います。

 

「モラハラ」については、結局離婚訴訟では独立の争点にならず、「慰謝料が認定されるほどの言葉の暴力があったか否か」というごく一般的な争点の中に含まれることになります。

そもそもモラハラがあったから何らかの法的効果が発生するという法律も存在しないのですし、「モラハラ」という言葉の定義自体が一定していないのですから、裁判所にしてみれば「モラハラがあったか否か」を敢えて認定する必要がないのです。

個人的には、「モラハラ」を強調しすぎる方の主張は、かえって裁判所からは軽く見られているように思います。

「それしか言うことはないのか」という感じで。

 

これに対し、「DV」主張は、一定の効果をあげることがあります。

しかし、訴訟の帰趨に重大な影響を与えるほどのDV被害が認められる事案というのは、離婚件数全体の中では、そこまで多くはないように思います。

また、仮に「一定の効果があった」としても、訴訟の判決への影響という意味では、慰謝料の額が多少増額されるくらいだろうと思います。

何より、あまりに「DV」主張を安易に連発しすぎると、本当に法の救済を必要としている被害者(多くは女性)が、その他大勢の「なんちゃって」の中に埋没してしまい、本来法が想定している救済が実現できない危険性があります。

 

代理人弁護士の皆さんももちろんですが、女性団体の相談担当の方々なども、「それはDV被害ですよ」と口にする時は、細心の注意を払っていただきたい、と思います。

目の前の方の話が大きな意味では「DV」に該当する可能性のある内容であったとしても、本人も意図せずだいぶ大袈裟な話になってしまっている(=感情が高ぶりすぎるなどしてだいぶ盛った内容になってしまっている)などということもありますし、仮に真実であったとしても離婚訴訟の判決に影響するだけの内容を持つ「DV」には該当しない、ということは十分あり得ることです。

何の気ないその一言のおかげで、「自分はDV被害者なんだ」という逃げ場を見つけてしまい、過去のご自分の問題を顧みずに、高額の慰謝料請求にすがり続けるようになってしまう、自分は悪くないと思い続けるようになってしまう、そういう方が多数いらっしゃるように思うのです。

 

安易な「DV」主張は、かえって問題を複雑にするだけでなく、周囲のご家族までも巻き込んで不幸にしてしまう危険性があります。

DV加害者のえん罪を晴らすことも、容易なことではありません。

このことはまた改めてお話しします。

ではまた!