痴漢えん罪

Blog

おととい、いわゆる痴漢が問題になった強制わいせつ被告事件について、
東京高裁の有罪判決を破棄して、最高裁が逆転無罪判決を下しましたね。↓
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090414170745.pdf

遅ればせながら私なりの感想を。
1.まず、那須裁判官の補足意見は、非常に示唆に富む意見だと思いますね。
極力簡単にまとめれば、こんな感じです。
(1)痴漢事犯は触ったかどうかという単純な事実が争点となるため、触られた被害者が誤解に陥ったとしても、「具体的かつ詳細な」供述をすることができてしまう。反面、弁護側がこの信用性を法廷で争うことは容易ではない。つまり、痴漢事犯には、事実誤認を生じさせる要素が多分に含まれている。
(2)被害者が「詳細かつ具体的」,「迫真的」で,「不自然・不合理な点がない」供述を公判廷で行ったとしても、検察官が公判廷の前に入念な証人テストを行う以上、それは自然の成り行きである。つまり、被害者の供述が「詳細かつ具体的」「迫真的」「不自然・不合理な点がない」としても、それだけでは「被告人が犯人である」旨の被害者供述が正しいとは限らず、事実誤認の余地がある。
(3)本件の場合、被害者供述は一般的抽象的な内容に留まっており、これが正しいと認めるに足りる補強証拠もない。よって、「疑わしきは被告人の利益に」ということで、被告人は無罪と判断する。
上記のうち(2)は特に画期的ですね。
そうなんです。検察官はばっちり下準備をしてくるから、きっちり証人尋問ができて当たり前なんですよ。
被害者供述がそれなりにきちんとしている(=下準備の結果がばっちりだった=信用できる)から被告人は有罪、というのでは、中世の魔女裁判と変わりありません。
無罪を争う刑事弁護を手掛けた弁護士であれば誰しも、「被害者供述は詳細かつ具体的で迫真性に富み、不自然不合理な点がない」という裁判所の紋切り型の判断で苦渋を飲んだ経験があると思います。
そのような安易な事実認定に警鐘をならすという意味で、非常に画期的な補足意見だと思います。
2.ただ、この種の痴漢事犯の場合、被害者供述以外の証拠がないと言うことは、ままあるような気もします。
そう考えると、今後痴漢を捕まえるためには、被害を受けた女性がその場で自分を触っている手を掴んで上に持ち上げて「痴漢です!!」等と叫ぶ、というようなアクションが不可欠になってきてしまうかも知れません。
つまり、「補強証拠はないが、被害者供述の信用性は相当に高い」というような形ですね。
しかしそれって、女性にとってはかなりハードル高い作業ですよね。
上記判決には、そういう問題も潜んでいるように思います。
3.もしも自分が突然、身に覚えがないのに満員電車で手を掴まれて「痴漢です!!」と濡れ衣をかけられてしまったら、どうしたらいいんでしょうね。
いちかばちか逃げるという手も、ある程度は有効かもしれません。
ただ、捕まるリスクを考えると、お勧めはできませんね。
私は、落ち着いて鉄道警察隊や警察に話をして、誤解を解いてもらえるように努力すると思います。
とはいっても、いくら努力しても疑いが晴れなければ、そのまま勾留されちゃいますものね。
で、否認を続ければ起訴されちゃうでしょうしね。
無罪にならない限り前科一犯になってしまうのは、ちょっとご勘弁願いたいですね。
というわけで、一番良い防御方法は、月並みですが、①満員電車に乗らないこと、②もし乗るなら両手で吊革を掴むなどして下側に手を持っていかないこと、だと思います。
パチンコに負けないためには、パチンコをやらないのが一番、みたいな感じですね。
ではまた。