先日の法廷にて

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気がつけば約2年ぶりの投稿です。

おかげさまで、この間もずっと忙しくさせて頂いておりました。

弁護士を取り巻く環境がだいぶ厳しくなってきているこのご時世では、大変ありがたいことです。

皆様にご報告できそうなネタもだいぶ貯まってきておりますので、小出しにご披露していきたいと思います。

手始めに、先日かなり印象的だった、とある法廷での出来事を。

 

その法廷は、当方依頼者Xともうお一方Zが、原告Yから被告として提訴された損害賠償請求訴訟で、私の立場は被告Xの訴訟代理人でした。

私はどちらかというと原告代理人に就任することが多いのですが、この事件は、身に覚えのない嫌疑をかけられて提訴され、大変困っているXからご依頼を頂いた件です。

原告Yにはとある事務所の若手弁護士Aが、相被告Zにはベテラン弁護士Bがついています。

 

今年の春に提訴されてからもう第5回目の期日ですが、未だ口頭弁論期日のままです。

通常の訴訟の場合、争点整理のために第2~3回目くらいからは「弁論準備」という手続に移行することが多いのですが、本件ではそういう進行になっていないのです。

なぜかというと、争点整理を云々する以前に、要するに原告Xの訴状(=若手弁護士Aが作成したもの)の出来が悪すぎて、そのまま先へ手続を進めることができないのです。

 

私も、相被告代理人弁護士Bも、訴状の出来の悪さを幾度となく法廷で説いています。

裁判官からも、Aに対して、訴状の足りない部分について何度も指導が入っています。

しかし、Aは、それが全く理解できないようなんですね。

 

先日の法廷でも、そういうやりとりが延々と繰り返されました。

専ら裁判官からAに対して指導が入っているのですが、相変わらずAがグダグダ言い返して、全然先へ進まないのです。

私も、Bも、ほとんど発言をしないまま、裁判官とAのやりとりを聞いていました。

午前10時半からの法廷だったのですが、気がつけばもう11時に迫ってきており、傍聴席には11時からの法廷の関係者(弁護士や当事者)が続々と集まってきていました。

でも、裁判官とAのやりとりは続いていました。

 

11時を回ったくらいで、Aが、裁判官に対して、「訴状のどこが足りないというのか」みたいな話をし始めたんですね。

まるで司法修習生です。

 

それを聞いていて、いい加減に私も頭にきてしまい、「そんなことは提訴前に事務所でボスと相談しろ!!お前弁護士だろうが!!」「話になんねェから、次回からボスを連れてこいよ!!」と大声を出してしまいました。

Aは凍り付いたようになり、そのまま期日を決めて、自分の宿題を大量に持って、逃げるように法廷を退散していきました。

結局終わったのは11時10分くらいでした。

正味40分の口頭弁論。普通の口頭弁論は5分もあれば終わるものですが、短い証人尋問くらいなら十分可能な時間でしたね。

 

まあ、振り返ってみれば、公開の法廷で、しかも大勢のギャラリーがいる中で、そんなことを口にしてしまったのは、私も悪かったし、ちょっとおとなげなかったなと思います。

ただ、でも、第5回期日にまで至って、しかも30分以上そんな法廷に付き合わされているのですから、私だってちょっと怒るくらいは許されるだろうと思います(実際、裁判官も私に何も言いませんでした)。

それに、いい加減怒ってあげた方がAのためでもあっただろう、とも思っています。

 

粗悪な訴状で提訴されてしまった被告Xって、本当にかわいそうなんですよね。

原告Yはただ立証責任の仕組みに従って敗訴するだけだから構いませんが(既に勝訴を確信している事件です。相被告Zはどうか分かりませんが)、被告側はずっと延々このグダグダ訴訟に付き合わなくてはならないわけです。

が、勝訴したところで、被告側は理不尽な請求を蹴り飛ばすというだけで、実質的に収入が発生するわけではありません。

しかも、こうやって裁判所、X&私、Z&B弁護士、と、大勢の関係者の時間を無駄にするわけです。

私に関して言えば、事務所最寄りの横浜地裁本庁ではなく、ちょっと離れた地域の裁判所まで行かなくてはならないので、往復の時間も交通費も無駄です。

粗悪な訴状で提訴することがどれだけ罪作りなのか、Aにはよくよく分かって頂きたいと思います。

 

あと、Aの事務所のボス弁(=私の知っている人)も、Aに丸投げせず、きちんと事件を見て頂きたいと思います。

ボス弁の心理として、面倒くさい小規模事件(本件の訴額はそれなりの規模ですが)ほどイソ弁に投げたくなる、というのは理解できます。

が、結局それが、多方面に迷惑を掛ける結果になってしまっているということを、ボス弁さんにも分かって頂きたいと思います。

 

以上、「粗悪な訴状で提訴された被告代理人のもどかしさ」でした。

これをご覧頂いている若手弁護士の方、提訴前に今一度その訴状で大丈夫か、じっくり吟味してくださいね。

ではまた!