いわゆる郵便不正疑惑に絡むFDデータ改ざん疑惑について

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三日間沖縄出張に行っていたのですが、ホテルで見たこのニュースには、正直かなりびっくりしました。
今や全マスコミがこの報道で加熱しまくってる印象ですね。
あの衝撃の無罪判決の直後ですから、無理もないとは思いますが。
渦中の前田検察官は、データの改ざんの痕跡がないかまた書き換えが可能かを調べるべくソフトの操作をしている間に、間違えて更新してしまったとして、意図的な改ざんを否定しているそうです。
つまり、証拠隠滅容疑を否認しているということですね。
現時点ではまだ捜査が十分でなく、起訴か不起訴かも決まっていないですが、もし前田検察官の言っていることが正しいなら、たぶん不起訴でしょうね。
そして、改めて検察審査会での審査を受ける、という展開になるのでしょう。
報道レベルの情報しかありませんが、その範囲で判断するに、私は、前田検察官の言っていることが正しい可能性はある、と考えています。
理由は、以下のとおりです。
1.検察主張でも、一貫して当該FDデータの最終更新日時は6/1とされていた(らしい)こと。
確かに検察の描いたストーリーにとっては、データの最終更新日時が6/8である方が都合がいいらしいです。
しかし、報道レベルの情報によれば、検察側が当該FDデータの最終更新日時を6/8として主張を展開した形跡は、一度もないようです。
むしろ検察は、一貫して当該FDデータの最終更新日時を6/1として主張を展開しており、結果的にそれが無罪判決の要因の一つになった様子です。
法廷に証拠提出された当該FDの捜査報告書とやらでも、最終更新日時は6/1とされていた様子です。
結局その捜査報告書と、村木さんの起訴直後に当事者に返還された当該FDの現物との不整合が発覚したわけですよね。
つまり、検察全体として当該FDデータの最終更新日時を6/8として主張してきたことは、一度もないと思われるのです。
2.検察全体の主張立証と、当該FDデータ改ざんの方向性とが全く合致しないこと。
以上のとおり、検察全体の主張立証は、当該FDデータの最終更新日時が6/1であること(それが事実である以上、当然です)を大前提として組み立てられてきているようです。
だとすると、当該FDデータの最終更新日時を6/8と改ざんすることは、検察全体の方針と完全に真逆の行為であり、検察にとって全くメリットがないどころか、100%有害な行為でしかありえないのです。
また、ご存知の方もいらっしゃっると思いますが、検察というのは完全なる組織であり、常に組織として意思決定します。つまり、必ず上司の決裁を仰ぎ、「検察官前田」個人ではなく、「大阪地検特捜部」として最終意思決定するのです。個々の検察官が独断で何かをするということはまずありえないのです。刑事訴訟法上は「検察官独立の原則」なるものがあるとされていますが、現実的には検察官個人の裁量はほぼ存在しないのです。
この点からすると、前田検察官の「データ改ざんの痕跡を探したり、実際データ書き換えが可能かを検証している間に、間違えて書き換えてしまった」との主張には、うなずける部分があると思うのです。
3.検察が当該FDの現物を証拠提出していないこと。
村木さんの弁護人だった弘中弁護士は、この点をもって「おかしいと思った」とおっしゃっていたようですね。前後の文脈がよくわかりませんが、そんなニュース映像をみました。
しかし、当該FDについての捜査報告書が提出されており敢えて現物を提出する必要がないことと、FDデータの最終更新日時が検察主張と合致しないことからすると、検察主張にとって不利な証拠となるFD現物は敢えて証拠提出しないという選択肢は、検察として十分ありうると思います。
最終更新日時は6/1であるという捜査報告書が作成され証拠提出されているわけですから、別に検察が最終更新日時6/8説で突っ走ろうとしたとか、当該FDの存在を隠そうとしたというような痕跡もみあたりません。
実際に法廷に携わっていない者が申し上げるのは大変僭越ですが、報道レベルの情報からすると、「検察から当該FD現物の証拠提出がなくても、別に何もおかしいことはない」ということになるように思います。
もちろん村木さんが起訴されたことそのものはおかしいと思いますが、その点とこの点は、話が別ではないかと思います。
4.検察が当該FDをそのまま返還していること。
冷静に考えれば分かりますが、もし検察が意図的にデータ改ざんして、その後現物を証拠提出しないことになったから当事者にFDを返還することになったとして、そのまま返還するものでしょうか。
普通なら、もう一度正しい日時にデータを戻してから返還するのではないでしょうかね。
ソフトで一度書き換えできたものが、もう一度書き換えできないわけがないと思いますし。
この点からも、前田検察官の「意図的にではなく書き換えてしまった」という話にうなずける部分がある気がするのです。
5.意図的な改ざんとしては手法がお粗末すぎること。
普通に考えて、もし検察が「当該FDデータの最終更新日時は6/8」で突っ走ろうとしたのなら、当該FDデータの捜査報告書も「最終更新日時は6/8」になっていて然るべきであり、「最終更新日時は6/1」との捜査報告書が作成され証拠提出されているなんてありえません。
変な話ですが、本気で改ざんしようとするなら、もっときっちりやれるはずです(恐ろしいことですが)。
この点からも、前田検察官主張にはうなずける部分があるように思います。
以上の次第で、私は、前田検察官の主張は正しいように感じています。
少なくとも私と交流のある検察官は、皆さん意識の高い方々ばかりであり、証拠改ざんなど万一にもありえないと心から信じることができます。
前田検察官は個人的には存じ上げませんが、特捜にいるくらいだしまさかそんなお粗末なことは万一にもしないだろうと、同じ法曹として、そう信じたいものです。
先日もブログで書いたとおり、この事件に深い背景があることは間違いないと思います。
ただ、それは決してこんな問題に矮小化されるようなものではありません。
FDデータ改ざん疑惑などとはまるで次元の違うもっと深い闇が背景にあると、私はそう思っています。
一体なぜ村木さんは起訴されることになってしまったのか。それが一番の問題です。
そして、このFDデータ改ざん疑惑は、上記の問いに対する回答に、全くなっていないのです。
別にデータ改ざんがあったがゆえに村木さんが起訴されたわけじゃないんですから。
もしかすると前田検察官も、世間の批判をかわすためにたてられた、哀れなスケープゴートでしかないかもしれませんよ。
皆様もくれぐれもごまかされませんように。
まさに本質を見る目が問われる事件ではないでしょうか。
ではまた。