おめでとうございます!!

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2011年(=平成23年)を迎えました。
年末のあまりの忙しさに、昨年を総括する余力もないまま、年始を迎えてしまいました。
気がつけば、法律相談業務の開始はもう明日。
こんな感じで今年も過ぎてゆくのでしょうね。
今年も事務所一同、より一層精進いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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さてさて、年始早々めでたいニュースがありました。
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野田聖子氏が提供卵子で男児出産 50歳、経過良好
産経新聞 1月6日(木)11時28分配信
 第三者の卵子で体外受精し妊娠したことを明らかにしていた自民党の野田聖子元郵政相(50)=衆院比例東海ブロック=は6日、都内の病院で第1子となる男児を出産した。野田氏の事務所によると、野田氏の体調は良好で、男児は健康状態を検査しているという。
 野田氏は「昨年5月に妊娠し、皆さまには大変ご心配をおかけいたしておりましたが、本日午前9時31分、男児を出産いたしました」とのコメントを発表。当面は産後休暇を取ることも明らかにしている。
 野田氏は事実婚の相手だった鶴保庸介参院議員と不妊治療を続けていたが妊娠に至らず、平成18年に関係を解消。昨年5月に米国で卵子提供を受け、事実婚状態にある飲食店経営者の男性の精子との受精卵を子宮に移植して妊娠した。同8月に妊娠の事実を週刊誌で公表し、今年2月中旬に出産予定だとしていた。
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野田聖子さん、長期にわたる不妊治療の結果、50歳にして初めての妊娠出産ということで、感慨もひとしおでしょう。
野田さんのような立場の方が、率先して不妊治療を行い、妊娠出産して、子供を育てていくということは、非常に意義のあることだと思います。
これから大変なこともあろうと思いますが、子供はそれ以上の喜びを与えてくれるもの。
楽しみながら育児をしていただきたいなと思います。
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私は、不妊治療と銘打つか否かはともかくとして、体外受精(野田さんの場合は第三者による卵子提供型)や、代理母出産など、女性が子を出産することができるようになるための制度は、大いに推進すべきだと思っています。
何せ今の日本は子供が少なすぎるのではないかと。
子供が少ないままだと、次第に国力が低下し、ジリ貧になるのが目に見えていますよね。
いわゆる貧困問題など他にも要因はあると思いますが、体外受精や代理母出産等の制度の法整備が進まないことは、確実に少子化問題の一因となっていると思います。
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一人の女性が一生に生む子供の平均数を表す人口統計上の用語で、合計特殊出生率という指標があります。
この合計特殊出生率、平成21年時点では1.37だそうです。
ご参考までに、下記に厚生労働省の統計資料のURLを貼り付けておきます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei09/dl/5hyo.pdf

一概には言えませんが、単純に考えれば、一人の女性が一生に生む子の平均数が2.0を下回れば、人口は確実に減少しますよね。
男性は出産できませんし、人口比で言えば女性より男性の方が多いわけですからね。
ちなみに、自然増と自然減の境界の数値は、2.08くらいだそうです。
また、私が生まれた昭和46年(=ベビーブーム時)時点の合計特殊出生率は、2.1~2.2くらいだったようです。
2.0を割ったのは、昭和50年ころみたいですね。
平成17年が1.26でもっとも低く、そこから徐々に上昇している、という状況のようです。
平成22年の統計データがまとまるのは秋くらいになるようですが、果たして子供手当て効果があるのかどうか、興味深いところです。
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法整備という側面から見ると、シビアな議論があるのは、体外受精よりも代理母出産の方ですね。
私が大学生だった頃からずーっと議論されていて、いまだに制度として導入されていません。
私の認識している範囲の情報で申し上げると、現状は以下のとおりのようです。
(1)規制法は存在しない。つまり、法的には別に禁止されているわけではない。
(2)しかし、日本の医師の大半は代理母出産について及び腰であり、日本で代理母出産を実施することは事実上できない状況である。
 ※例外:諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長が、ガイドラインを設けて部分的に実施している。
医師が及び腰となっている理由のうち主たるものと考えられるのが、日本産婦人科学会(日本の産婦人科医の90%以上が加盟?)が平成15年4月に出した会告「代理懐胎に関する見解」です。
http://www.jsog.or.jp/kaiin/html/kaikoku/H15_4.html
うち「代理懐胎の是非について」と題する部分をそのままコピペします。

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代理懐胎の実施は認められない.対価の授受の有無を問わず,本会会員が代理懐胎を望むもののために生殖補助医療を実施したり、その実施に関与してはならない。また代理懐胎の斡旋を行ってはならない。
理由は以下の通りである.
1)生まれてくる子の福祉を最優先するべきである
2)代理懐胎は身体的危険性・精神的負担を伴う
3)家族関係を複雑にする
4)代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められない
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この1~4、いずれも合理性がないと思うのは、私だけでしょうか?
まず、1ですが、代理出産だと「生まれてくる子の福祉を最優先」することにならないのでしょうか?
上記会告では、代理出産に伴う出産後の引渡しが「児童の権利に関する条約」35条で禁じる「児童の誘拐、売買又は取引」に該当するとしているようですが、ちょっとそれって飛躍しすぎじゃないでしょうか。
代理出産の目的は、がんなどの病気や出産時の事故による子宮全摘など、何らかの理由で妊娠できない女性が、他の女性の子宮を借りて自分の子を生むことにあります。
別に生まれた子供そのものを売買や取引の対象にしたりしているわけではありません。
次に、2ですが、これは別に代理懐胎に限った話ではないでしょう。
代理出産禁止の理由付けにあげるには、ちょっと薄弱に過ぎる根拠ではないでしょうかね。
次に、3ですが、これは2以上に意味が分かりません。
何が「複雑」なのでしょうか。
代理出産で生まれようとも、生まれてきた子はごく普通の子じゃないですか。
代理出産禁止の理由付けとしては、根拠として薄弱という以前に、そもそも結論との合理的な因果関係が認められないのではないでしょうかね。
最後に、4ですが、平成15年当時は分かりませんが、現時点では十分な社会的許容性があるように思います。
高田伸彦氏・向井亜紀氏ご夫妻が、平成17年、代理出産されたお子さんの出生届けを品川区に不受理とされたことに対する処分取消審判を申し立てたことは、皆様もご記憶に新しいのではないかと思います。
このときは、東京家裁が申立却下の決定を下したのに対し、東京高裁は申立を認め、品川区に出生届けを受理するよう命じる旨の決定を下しました。
しかし、最終的には最高裁で、平成19年3月23日、「立法による速やかな対応が強く望まれる」との意見を付しつつも、品川区の不受理処分は適切であったとの判断が下されました。
この一連の裁判の際の報道を見る限り、かなりの数の方々が代理出産を許容していた記憶ですし、最高裁までもが「立法による速やかな対応が強く望まれる」とまで言っているのです。
より正確には、以下のとおりです。
もっとも、女性が自己の卵子により遺伝子的なつながりのある子を持ちたいという強い気持ちから、本件のように自己以外の女性に自己の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産することを依頼し、これにより子が出生する、いわゆる代理出産が行われていることは公知の事実になっているといえる。このように、現実に代理出産という民法の想定していない事態が生じており、今後もそのような事態が引き続き生じ得ることが予想される以上、代理出産については法制度としてどう取り扱うかが改めて検討されるべき状況にある。この問題に関しては、医学的な観点からの問題、関係者間に生ずることが予想される問題、生まれてくる子の福祉などの諸問題につき、遺伝子的なつながりのある子を持ちたいとする真しな願い及び他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえて、医療法制、親子法制の両面にわたる検討が必要になると考えられ、立法による速やかな対応が強く望まれるところである。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070912151733.pdf
ちなみに最高裁の理論を理解するに当たっては、昭和37年4月27日の最高裁判決を理解する必要があります。
あまり長くなっても何なので引用だけしておきますが、これって結論はともかくとして、かなり特殊な事案についての判例なんですよ。
代理出産を云々するときに用いることが必ずしも適切な事案であったとはいえないように思います。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319124430129252.pdf
以上より、日本産婦人科学会は、速やかに代理出産に対する見解を改めるべきではないでしょうか。
「平成15年の会告があるから」では、全く合理的な説明にならないことは明らかでしょう。
そして、国や厚生労働省ともども、以下の現実の問題を直視すべきではないでしょうか。
(1)現時点でも海外へ渡って高額な費用を支払って代理出産を試みている人々が多数存在すること。つまり、代理母のニーズは相当なものがあると思われること(=現時点で高額な費用を支払って代理出産を可能とできるだけの経済力のある層は、代理出産を望む人々のうちごく一部のみと考えられること)。
(2)日本国内で代理出産が事実上禁じられているがゆえに、代理出産に関する闇のマーケットが生まれてしまっていること。
(3)現に多数存在する代理出産による子供たちのためにも、そういった子供たちが大手を振って生きていけるような法整備が社会的に必要であること。

年始から熱く語ってしまいました。
代理出産問題は、私もかなり注視している問題ですので、また機会を見つけてコメントしていきたいと思います。
ではまた。