夏季休廷前の証人尋問づくし

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昨日午後いっぱいの証人尋問を終えて、ようやく仕事と生活が一段落しました。
今月は証人尋問づくしでいつも以上に大変な月だったのです。
なぜ証人尋問づくしだったかというと、たまたまタイミング的に和解が難しい判決事案(複数)の進行が大詰めに来ていたことと、来週から裁判所が夏季休廷期間に入ることが原因です。
極めて実務的な理由ですよね。
まだ今月あと10日ほどありますが、来週から夏季休廷で一気に裁判所の開廷ペースが落ちるので、「昨日で一段落」なわけです。
とはいっても、手帳をみると予定はびっしり。
証人尋問予定が立て込んでいたので、そのあおりで他の打ち合わせ予定が来週以降に集中しているのです。
でも、そういった予定は、証人尋問準備とは負担感が段違い。
やはり証人尋問予定を無事に消化できたことが、今の「一段落」感につながるのでしょう。
ちなみに裁判所の夏季休廷というのは、前半後半に分かれてそれぞれ3週間ずつ、裁判官がお休みをとる、というものです。
単純に言えば、合計6週間に渡って裁判所の機能がゆるやかになる、ということです。
夏季休廷のことを依頼者の方々にお話すると、「裁判官って夏休みがあるんですか!?いいご身分ですねー」というような反応(羨望?批判的?)がかえってくることがほとんどです。
でも、裁判官の夏季休廷期間というのは、実は、担当事案の判決起案(=判決作成という意味)を一気にこなすための期間なんですよ。
かえって普段よりも過酷な期間だったりします。
私の友人や身内にも裁判官がいますが、夏季休廷期間にのんびり南の島を満喫して真っ黒になって帰ってくる、なんて方はちょっと思い当たりませんね。
で、判決起案となると、やはりその前に証人尋問をこなす必要があることが大半です。
もちろん証人尋問をせずとも結審できる事案もありますが、そういう事案は、例えば借用書もあり当事者間でも金銭消費貸借があったなどの事実関係に争いがない貸金返還請求事案など、つまり起案にさほどのパワーを要する事案ではないことが多いわけです。
起案にパワーを要する事案は、やはり事実関係に争いがある事案ですよね。
そういう場合は、やはり証人尋問で、当事者の皆さんのお話をお聞きすることが大事なわけです。
そういう裁判所の事情もよくわかりますので、我々弁護士も、この時期には証人尋問づくしを甘受するわけです。
こうして、夏前には証人尋問が集中する、という現象が起きるわけです。
ちなみに今回の証人尋問月間の証人尋問は、実務家的にはかなり興味深い内容のものばかりだったと思います。
で、自分としてはいずれの証人尋問でもそれなりに良い結果を出せている気がします。
少々不謹慎かもしれませんが、各判決が非常に楽しみ、という気持ちもあります。
ところで昨日の証人尋問。
ちょっと面白いことがありました。
もちろん事案の内容を詳細にお話しすることはできませんが、守秘義務に反しない範囲で申し上げます。
原告は一名(X)、被告は三名(Y1、Y2、Y3)、それぞれ別の弁護士がついている、という事案で、私はY3の代理人です。
昨日は、X側の証人一名(A)と、相被告Y1の、合計二名の証人尋問が、午後いっぱいかけて行われました。
私の依頼者Y3と、相被告Y2の証人尋問は、二週間前に終わっています。
かなり複雑な内容なので、単独裁判官ではなく、合議体(=裁判官3名)が担当になっています。
で、午後1時30分から午後5時くらいまでびっちり証人尋問をして、次回期日を決めてるときのこと。
判決前提で、互いに最終準備書面を提出することになったので、本日の証人尋問調書(録音反訳)がいつころできるかという話になったとき。
物静かな裁判長がボソッと一言。
「今日の証人尋問は、内容もわかりづらいし、声も小さいし、滑舌も悪いし、問いと答えがかぶったりしてますから、調書ができるまで結構時間がかかると思いますよ」
裁判官が法廷でこんなことを言うのは、今まで聞いたことがありません。
不意をつかれてウケそうになりましたが、必死にこらえました。
どれが誰のことを言ってるかは、ほぼ一目瞭然でした。
内容がわかりづらいというのは、おそらくY1の代理人のベテランの先生。かなり熱い尋問スタイルだったので、確かに一瞬何の質問なのかわかりづらくなる瞬間もあったことは事実でした。
声が小さいのと滑舌悪いのは、おそらくY1。まあ今回の件で一番(というよりも唯一)責任ある人物なので、声が小さくなるのも致し方ないかなというところ。事情を全く知らされず、完全にY1に利用されただけのY2とY3は、本当に気の毒な立場なのです。
問いと答えがかぶってしまったのは、Y1に対する原告代理人の反対尋問のとき。Y1も痛いとこを突かれて熱くなったようで、実際裁判長から注意喚起されてました。原告代理人からすればもらい事故みたいなもんでしたけどね。
いずれも私とは関係ないはずなので…実は関係あったりして?(笑)
ただ、私の目から見て、Y1の代理人のベテランの先生の証人尋問は、裁判長が言うほど、そこまでわかりづらい内容ではなかったと思います。
むしろ、敵性証人Aに対する反対尋問のときなど、あの熱いスタイルがかなり効果的なヒットを見せていたように思います。先生の熱に当てられてか、Aがちょっと余計なこと(=こちらからすればありがたいこと)をポロリともらしたりもしたんですよね。
私のスタイル(基本的に淡々とやる)とはだいぶ違いますが、こういう証人尋問もあるのか!そういう切り込み方をするか!という、ある意味目からウロコな部分もありました。
普段は声がでかくて元気なごく普通のおじいさん、って感じの方なんですが、やはり長年弁護士をされているだけあって鋭いキバを持っているなと、改めて感服しました。
いぶし銀のベテランというよりは、初めてカメハメ波を放ったときの筋肉ムキムキの亀仙人(ドラゴンボール)みたいなイメージでしたね。
法廷が終わり、裁判体と原告代理人が退廷した後、そのベテランの先生。
書記官に、「どうもわかりづらくてすみませんでした」と、愛嬌たっぷりに挨拶してました。
そういう憎めないあたりも亀仙人ぽい?
もちろん普段の生活スタイルは亀仙人とは違うだろうと思いますけど。
この事件でたまたま相被告の代理人になったというだけの方ですが、何とも印象的でした。
ではまた。